「水辺のブッダ」 ドリアン助川 感想・読後レビュー 社会の暗部を描く

 

 映画「あん」で一躍有名になったドリアン助川の最新作です。
 ホームレスと、社会から転落していく少女を描いています。最後はとても悲しいけれど感動の結末をむかえます。

 ドリアン助川について


 ドリアン助川は1990年ロックバンド「叫ぶ詩人の会」を結成し、独自のスタイルで叫ぶそのパフォーマンスで話題になりました。その後アメリカに渡り、日本での活動から姿を消していましたが、映画「あん」で、再びその名を広めました。
 ニッポン放送のテレホン人生相談のパーソナリティとしても知られています。

 あらすじ


 ここからは本の内容について書いていますので、ネタバレに注意してください。

 望太は新宿のホームレス。多摩川に入水自殺を試みるも京王相模原線沿線のホームレスに助けられる。
 そして、そこで新たなホームレスの生活が始まります。

 もう一人の主人公は緒川絵里という少女。再婚した母親と、新しい父親と血のつながらない妹と暮らしている。
 絵里は、徐々に道を踏み外し、社会から転落していきます。

 ブンさんを通して語られる世界観


 ブンさんは望太のホームレス仲間で、ホームレス仲間や望太の心の師匠みたいな存在です。ブンさんを通して、神の存在とか、無心になる方法とかが語られます。

 しかし、そのブンさんがインドに行ったとか、ネパールに行ったと言うのが、嘘であると最後の方で分かります。

 そうなると、ブンさんは妄言を行っていたことになります。望太もそのことに対して疑心暗鬼になりますが、読者の私もよくわからなくなってきます。

 ことばだけなら何とでも言えるということでしょうか?

 望太と絵里の接点


 望太は絵里の実の父親であり、望太は自分の犯した殺人を悔い、ホームレスをしています。望太はある事件をきっかけに、絵里が近くにいることを知り、絵里を強く意識するようになります。

 ホームレス殺人事件


 そんな中、ホームレス仲間が何者かに襲われます。その見えない襲撃者のために、仲間が散り散りになります。

 望太の死と絵里への祈り


 最後に望太は、ホームレス襲撃者と揉み合い、サバイバルナイフで刺されます。
 途切れ行く意識の中で望太は絵里に心の中で語ります。
「泣きたいことがあったら、川にそっとつぶやきなさい。君の涙は、お父さんが海まで流してあげる」
 と。
 心象風景で描かれているこの場面が、とても感動的です。

 まとめ


 物語はホームレスやDVやドラッグや性的依存など社会の影の部分に焦点を当てて、描かれています。特に絵里に対する男からのDVの場面とかは目をそらしたくなります。

 望太と絵里は、最後まで会うことは叶わなかったけれど、望太は死の間際に自分が抱えていた闇の部分を昇華することができたのでしょう。

 その救いのなさに、読み続けるのがたいへんな作品でしたが、最後の場面は希望を感じさせる形で終わっています。

 現代のいろいろな病んでいる問題を考える際に目をそらせてはいけない作品であると思いました。

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