「風の歌を聴け」 村上春樹 感想・読後レビュー 村上春樹の小説デビュー作
「風の歌を聴け」は1979(昭和54)年発表の第22回群像新人文学賞を受賞し、同年5月発売の『群像』6月号に掲載されました。そして、同年7月23日に講談社より単行本化されました。
タイトルはトルーマン・カポーティの短編小説"Shut a Final Door"(最後のドアを閉めろ)の最後の一行”Think of nothing things,think of wind"から取られました。
この小説を書いたいきさつ
村上春樹は後年、エッセイ「走ることについて語るときに僕のかたること」の中で、この小説を書いたいきさつを書いています。
1978年4月1日の午後1時半前後、神宮球場のヤクルトスワローズ対
広島カープの試合の一回の裏、デイブ・ヒルトンがレフトヒットを打った時に、「そうだ、小説を書いてみよう」とひらめいたそうです。
「空から何かが静かに舞い降りてきて、僕はそれを受け取った」と彼は書いています。
その文章の中で、この作品を「1973年のピンボール」と一緒に「感覚的な作品」であると自ら評しています。
ネタバレ注意
このあとは、話の内容に触れる部分があるので、ネタバレに注意してください。
鼠との出会い
話は、村上春樹の前記作品の主要な登場人物の鼠と僕の青春物語です。特に鼠との出会いのフィアット600の事故の場面などは青春映画の一場面を見ているようです。
気の利いたセリフや箴言の羅列で、物語は進んでいきます。
コカ・コーラをかけたホットケーキ
ノーベル文学賞の発表の時期になると、よくハルキストが、ホットケーキにコカ・コーラを一瓶かけて、4つに切ったものを食べていますが、それは鼠の好物で、この小説の中に出てきます。
デレク・ハートフィールド
僕が影響を受けた、アメリカの小説家「デレク・ハートフィールド」はこの小説の中で、何度も出てきます。
この小説家が架空の存在であることを、このブログを書く時に初めて知りました。
団塊の世代
村上春樹は1949年生まれで、ちょうど団塊の世代にあたります。そのため、この小説にも、学生運動などが出てきます。
村上作品のエッセンス
文章のリズム感や、一見回りくどい表現や、次の展開を予感させるセリフ、日常生活の細かな描写など、その後の村上作品のエッセンスがつまった作品であると思います。
まとめ
村上春樹のデビュー作であり、村上作品のもっとも初期の初々しい感性に満ちた作品です。村上作品を読んでいく上で一度は読んでおきたい一冊です。
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